日常。

Mikaは、学校が休みなので、朝から店にいる。

「.....来ないねぇ。お客さん。」

近くのショッピングモールに、スターバッ○スが入ってから、客の数が急に激減した。それでも、常連さんは来てくれるが、大抵は「閉店前の1時間」である。

「....仕方ないわよ。例の件で1週間も臨時休業させたんだから。」

ご存知の通り、彼女たちには裏の顔がある。ただ、一部の客を除いてその事を知る人はいる訳がないし、不定期で休業する事が多いと知っている昔からのなじみの客でない限り、そんな店に入りたがらないだろう。

「ぼちぼち、コーヒーのつくりおきを廃棄しなきゃなんないですね。」

もちろん、コーヒーは入れたてがいいのは良くわかっている。ただ.....1杯づつ作るという事は滅多になく、数杯分同時につくる。

お客がたくさん入ってくる時間帯であれば特に問題はないのですが、それ以外の時間は廃棄が多くなる。あまり長く置いていると苦くなってしまうから、ある程度の時間を経過すると、廃棄しなきゃならないから。

「こんにちは!ダス○ンです。マットの取り替えに参りました!」

伝票に受け取りのサインをして、浄水機のフィルターなどを受け取る。そう、不定期に休みが入る事がある以外は、ごくごく普通の店なのである。

最近の珍客に、ユニ○ットという会社の人が来た。どうも、単なる事務所かとおもったらしい。もちろん、丁重にお断りして帰ってもらいましたが、正直ショックだったみたいです。


今日はめずらしく一人もお客さんは来なかった。それでも一日の終わりには集計をする。....憂鬱だ。

豆を仕入れている代理店経由で、自販機を置かないかという勧誘を断りきれずに、結局、店の前に1台と所有している有料駐車場に4台置いた。特に駐車場前は1日中人通りが多く、皮肉なことに先月の店の売上の60%を占めている。

入り口のプレートを「close」にする。ここは住居兼店舗なので、空になる訳ではないが、カギを確認する。

....閉めた店の中をうかがっている男がいた。

「どうかされましたか?」

その男は今にも泣きそうな顔をしていた。

「中へどうぞ。」

Mikaが男に黙っていれたてのブラックコーヒーを差し出す。

「これは私のおごりね。」

男は、じっとコーヒーを眺めた。そして横にあったミルクをそのコーヒーに注ぎ....コーヒーの黒と、ミルクの白が混ざっていくのをずっと眺めていた。
そして、そのコーヒーをぐっと飲み越した。その顔はもう笑顔になっていた。

「ありがとうございました。」

ふかくお辞儀をして、店を出る男の姿をみて、4人は思った。

(こういう事があるから、こういう日だって頑張ってられるのかも)

−そしてまた一人、常連が増えた。

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